『クマノミ』  

 よく行く店に、熱帯魚が飾ってあった。うん、あれはクマノミ。クマノミ3匹。他にも何種かの熱帯魚。
 
 そのクマノミ達は、あきらかにサイズが違っていて。多分、一番大きいのがメスで、次がオス。で、一番小さいのが未成魚ね、と妙に納得してしまった。それからは、その店に行くのが楽しみで。
 
 でも、3匹のみの中の未成魚って、悲しくない? 2匹のペアがいて、一人だけ、『独り』なのよ? 2匹がラブラブでも、独り取り残されて。切なかった。
 でも。クマノミが毎回見れて、本当に楽しみだったの。しかも、3匹。多分、メスとオスと未成魚の3匹。
  生で見れて、本当に幸せだった。
 
 ある時、2匹が死んだのか、中位の大きさのが1匹だけ、残ってしまった。あれはオスか未成魚だろうと思った。かわいそうなのは、その次。
 何日かしてその店を訪れると、中位のサイズだったはずのクマノミが、あきらかに大きくなってる! メスに性転換したのね。多分。その過程の一部を多分私は生で見れたのだ。でも。
 
 それはそれで切なかった。
 だって、せっかくメスになったのに、独りなんだよ? 何のためにメスに変化したんだか。
 
 群れの中で、一番大きいのがメスになる。次がオス。他は未成魚のまま。そして、メスが死んでしまった時のみ、2番目に大きかったオスがメスに変化する。それが、クマノミ。生で見れたのは幸せで、感激して。
 
 でも、たった独りで、それでもメスに変化した。それはそれで切ない。
 じかに見て幸せだった。ずっと見たかった夢も実現した。でも、もう私はクマノミを飼えないな、と思ってしまった一件であった。(でも欲しい)

(2001年)